CR2032の標準放電電流は0.2mAであるのに対し、TWE-Liteが電波を送受信するときの消費電流は約20mAと、100倍の開きがあります。TWE-Liteで造った最初の作品である自転車ビーコンでは、リモコンの電源としてCR2032を使用し、大きな電流を取り出すためのバッファとして、1Fの電気二重層コンデンサを用意しました。
しかし、この回路では、CR2032から流れ出す電流を制限していなかったため、TWE-Lite動作時に大電流を放電する事に変わりは無く、CR2032は短期間で電池切れになりました。
CR2032の特性を調べていくうちに、大きな電流を流した場合、標準放電電流で取り出せる220mAhよりもはるかに少ない容量しか取り出せない事を知りました。電池を長く持たせるには電流を制限する必要があると考え、最近試作した戸締まりチェッカーのセンサー子機では、バッファコンデンサとの間に抵抗を入れてみました。
この回路は一見うまく行くかに見えましたが、始動性に問題がありました。C1の両端電圧を見てみると、2Vから全く上昇しなくなるのです。オシロスコープが無いので実際の波形は不明ですが、イメージとしては下のようなグラフになります。
この現象はコンデンサの容量とは関係なく発生し、2Vに達した段階でCR2032からは数mAの電流が連続して流れていました。しかし、R1を100Ωにすると発生しなくなります。
ファームウェアで何とかならないかと、SVM(Supply Voltage Monitor)の設定変更を試してみましたが、cbAppColdStart()にすら達していないようで、お手上げでした。
この現象は、C1が充分に高い電圧まで充電されていれば発生しません。試しに、2Vで頭打ちになった状態でRSTをGNDに一瞬落としてみると、C1は3V近くまで充電されます。C1両端電圧の変化イメージは、下のようなグラフになります。
どうやらこれは、TOCOSさんの技術情報「信頼性向上のための検討」に書かれたリセットICが必要なケースのようです。そこで、高い始動電圧を確保するために、2.63VのリセットIC(TCM809R)を追加しました。TWE-Liteの内部プルアップを考慮して、外部の10MΩプルアップは省略しています。
起動後は、Q1でリセットICを無効化します。これは、起動後の電圧ドロップでリセットICが再動作してリセットを繰り返すのを防ぐ事と、リセットICの動作電流(9μA)を節約するためです。
リセットICを追加したところ、2Vで頭打ちになる現象は発生しなくなりました。 この時のC1両端電圧の変化イメージは、下のようなグラフになります。
定常時のスリープ中に電池から流れる電流を測ったところ、約1.5μAでした。Q1によるリセットICの停止が効果を奏しているようです。
今後は、コイン型リチウム電池で真面目に電源を設計する場合、リセットICは必ず付けるようにします。
2015年8月13日追記
CR2032の放電特性を検証した結果、電気二重層コンデンサとリセットICを使用しない方向で見直しをしています。詳しくは、コイン型リチウム電池でTWE-Liteをバースト送信させた場合の電池寿命を検証してみる
で始まる放電実験をご覧ください。
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